若葉の繁る頃に

しがないアイドルオタクの備忘録とチラシの裏書き。「なんとかなる」人生を送るのが目標です。

#2 「M 愛すべき人がいて」について

遅れながら「M 愛すべき人がいて」を読了した。

 

単行本が届いたのは今週の火曜日なのだが、木曜日からの3日間でスローペースながらも、200ページ弱を読み終えた。

 

 

Twitterではテレビドラマ版と照らし合わせた短文の感想を書いているが、ここでは感想の詳細を良い点/悪い点/総評に分けて色々と書きたいと思う。

 

ネタバレが含まれているので注意。

 

 

まずは良い点から。

 

  • 「誰かの為に尽くしたい」と純粋な心で困難に立ち向かう姿は素敵

 

簡単に解釈すると、この作品は「愛の力で地位を成し遂げた栄光と挫折のストーリー」である。何ともベタな恋愛小説や映画を彷彿とさせるが、浜崎あゆみという一人の少女が"max matsuura"の手によって一気にトップアーティストとしての地位を成し遂げたと言うのは紛れも無い事実である。

浜崎あゆみという人間は、世間からしてみれば型破りな部類に入ると思う。学校という誰しもが通った組織の中で協調性の乱れが目立ち、通信簿も6年間評価が変わらないまま。周囲と歩調が合わせられない事を自覚しているのもあって、社会性は皆無に等しいだろう(自分も人の事は言えないが)。

しかしその分、感受性豊かで人想いな一面は人一倍であると思う。彼女は幼少期から誰よりも温かく見守ってくれた祖母、そして何よりも人生の転機に導いてくれた"マサ"の為、身を犠牲にしてまでも先の見えない未来に突っ走る事が出来る。共通してそこにあるのは「恩返しをしたい」という純粋な想いである。

これは中々出来ない事なのでは無いのか。いくら目標に対する目的が誰かの為であっても、一つ一つのマイルストーンを組み立てなければ中々モチベーションというものは保てられないだろう。ビジネスにおいても同じ事が言える。いくら歌詞が"マサ"に対するラブコールであったとしても、想いを力や行動に変えられるのは常人には出来ない事なのでは無いかと思う。自分を救ってくれる、支えてくれる人の期待に応えられる様に、がむしゃらに立ち向かう彼女の姿を見て不快感を覚える人はそう居ないと思う。

 

  • 先入観がいかに悪であるかと思い知らされた

 

これは感想と言うよりも勉強になったと言い換えた方が適切だが、改めて思い知った。

誹謗中傷という言葉がテラスハウスの一件で問題とされている時代の中、先入観という言葉はかなり重要な意味を成していると思う。

浜崎あゆみがメディアの取材で固有名詞を「あゆはぁ」「あゆはねぇ」という言葉を用いていたのだが、この今時のギャルらしい言葉を使うだけで「バカ」というレッテルを貼られ、会った事の無い人間を罵倒する構図は今のネット社会とよく似ている。

しかしラジオ番組の生放送で"max matsuura"と出会ってから4年間の事を赤裸々に自分の言葉で告げた事で、炎上の火種になるどころか、彼女への感謝のメッセージが続出したのだ。

(ドラマ版では当シーンを5話に放送すると予告していたが、この一連の流れを「復讐劇開始」と説明している。不特定多数の批判を一掃する事を復讐というには少し違うような。まぁいいや)

自分はWindows 95がこの世に出回った1995年に生まれた。「フルゆとり世代」と呼ばれインターネットと常に生きてきた自分は、過去にTwitterで先入観だけで物を判断したツイートをした事で人々の反感を買い、反発を受けた事がある。「浜崎あゆみは本当にバカなのか」という記事を見て悲しむ彼女の情景を想像すると共に自分の過去の失敗が走馬灯の如く思い出させ、自らを反省するきっかけに繋がった。

 

次に悪い点について。

 

  • 内容が薄い

まずこの本を購入する前に「恋空」等といったケータイ小説の様な文章で構成されているという事は前々から予想は付いていた。テレビドラマ自体があからさまなコント演劇になっているのだから。逆に言えば入りやすく登場人物も実質2人しか居ないので手軽さは抜群なのだが、深入りして見たかった自分にとっては、何処か物足りないという部分がどうしても引っ掛かってしまった。

 

  • あゆの「人に対する依存度」が高過ぎる

この本には随所に「"マサ"が居なければ歌う事は出来ない」と綴っている。確かに分かる。"マサ"が居なければ純粋な恋心を歌詞を作る事は出来なかっただろう。「Trust」を最初聴いた時には自身が恋愛経験が少ないにも関わらずどことなく共感出来た所はあった。しかしシンプルに粘着深い女が苦手な自分に取っては不快感でしか無かった。"max matsuura"としての仕事に疲れ、自堕落な生活に陳腐な宴会での醜態を目の当たりにしたらそれは腹が立つ気持ちも分かる。だが感情を丸出しに私物化をしようと自分の我儘を押し通すのはまた違うのでは無いか、と思う。まぁこれは自分が女心を分かっていないからこんな事言えるのかもしれないが。

しかし絶望から這い上がり、今日に至っても未だ活動を続けている彼女の力は伊達では無い。これは断言出来る。

 

最後に総評。

 

この本は「暴露本」として良くも悪くも注目を集めた作品であるが、最後に彼女が

 

「今回の人生で一生に一度きりだと思えるほどの大恋愛をしましたか?」

 

と間接的に読者にメッセージを放っている。

 

そして「私なら…」と続け様にこう答えた。

 

「はい。自分の身を滅ぼすほど、ひとりの男性を愛しました。」と。

 

もちろん自分はNOだ。童貞且つまともな恋愛などした事は無く、今でもアイドルオタクをしている身なのでそんな事など知る由も無いのだが。ただ浜崎あゆみという「平成の歌姫」とも言わしめた歌手が、一人の人物によっていかにして何も無かったかつての名も無き少女をここまで成長してくれたという栄光の中身を知りたいのであれば一読の余地はある。

そしてこの本は特にアイドルオタクに見て欲しいという勝手な想いを持っている。「自分がこんな運命的な出会いを果たしたらどこまで本気になれるのか」と自問自答を繰り返すと思う。特にガチ恋オタク。少なからず僕は大いに考えました(この部分だけ偏差値3の文章)

そして自分は昔からエイベックスが作り出すサウンドが大好きだ。小学生の頃から周囲がアニソンばかり聴いて給食の時間でもそれが永遠と流れていく中、Every Little Thing大塚愛Do As Infinity等を聴いて大人になった。昔からエイベックスサウンドは癒やしでありエモーショナルな存在であった。浜崎あゆみ無くしてエイベックスは語れない。その音、歌詞に救われてきた自分にとってまた一つ知識を蓄るきっかけが出来た作品であった。

M 愛すべき人がいて (幻冬舎文庫)

M 愛すべき人がいて (幻冬舎文庫)