若葉の繁る頃に

しがないアイドルオタクの備忘録とチラシの裏書き。「なんとかなる」人生を送るのが目標です。

#18 フラガール


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2023/8/5 追記

2023年8月4日、谷川紀美子のモデルとなった小野恵美子さんがご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。

 

このブログも開設してから2年が経過した。亀の歩みより遅いペースで一応更新して入るが、フォロワーさんから「ちゃそぴさんのブログ好きです!」という声を頂く。こんなチラシの裏書きを褒めてくださり本当にありがとうございます。3年目も自分のペースで更新していきたいと思うので今後ともよろしくお願い致します。

 

それでは本題へ。

 

5/14-23の9日間、新国立劇場中劇場にて推しメンである潮紗理菜さんの初主演作「フラガール - dance for smile - 」が公開された。勿論推しメンの晴れ姿をこの目で確かめる事が目的であったが、彼女はもちろん共演者の演技に圧倒され気付けば舞台そのものを楽しんでいた。

今回はそんな夢のような9日間を振り返っていきたいと思う。

 

フラガールとは

福島県いわき市にあるスパリゾートハワイアンズで行われるポリネシアンショー公演*1に参加する「スパリゾートハワイアンズダンシングチーム」の事である。フラとはいわゆるフラダンスの事で*2、ハワイで昔から先住民に伝わる伝統芸能である。ハワイを象徴する波の動き、雨、風で揺れるヤシの木、花を手の動きで表現すると共にウクレレや太鼓といった楽器や詠唱を組み合わせる事で物語としての演出を展開し、当時言葉が存在しなかったハワイで歴史を伝える為の伝統ある文化の一つである。

2006年に映画化され、蒼井優さんや南海キャンディーズしずちゃんが抜擢された。口コミから話題となり観客動員数は約125万人、興収14億円の大ヒット作となった上に第30回日本アカデミー賞の最優秀作品賞に選ばれた。その後は定期的に舞台が行われ、2022年版でついに推しメンである潮紗理菜さんが蒼井優さんと同じ主演に抜擢されたのであった。

あらすじ

 昭和40 年、福島県いわき市、かつて炭鉱の町として栄えた石炭の町も、石油という新しい燃料の台頭によって斜陽産業と化していた*3
人員削減のため毎月リストラが発表され、何千人もの労働者のクビがきられていく*4。そんな状況の中で、町おこしの新事業として常磐ハワイアンセンター*5建設の話が持ち上がる。
常磐の地の温泉を利用して、ハワイの雰囲気を持ったリゾート施設を作ろうというのだ*6
そしてハワイアンダンスのショーで盛り上げたいという計画だ。もちろん労働者たちは反対の声をあげた。「なにがハワイだ!」
この町に生まれ育った早苗(太田夢莉)は、毎日泥まみれの生活から抜け出すチャンスではないかと考えて友達の紀美子(潮紗理菜(日向坂46))を誘ってダンサー募集に応募することを決意する。しかし、和美(兒玉遥)を中心に集まった女の子達は「裸躍りさせるつもりか?」と、ほとんどの者が消えてゆき、残ったのは、紀美子と早苗の数人だけ、本当にフラダンスのチームなど作れるのか不安になる。
そんな田舎町にハワイアンセンターの企画部長は元SKD*7 のダンサー平山まどか(矢島舞美)を連れてくる。紀美子たちは、サングラスをかけ田舎者を下に見るまどかに、最初は不信感を持つが、その卓越したダンスの技術とその魅力に、やがて引き込まれていく。
炭鉱の組合員の反対運動が激しくなる中で、紀美子は炭鉱で働く母親千代(有森也実)に反対されながらも、家を出てフラガールになることを決意する。

「復興は少女たちの笑顔が作る!」
そんなフラガールたちの奮闘を描いた物語である

引用元:フラガール − dance for smile – | Information | 株式会社アール・ユー・ピー 

舞台前

2022年3月。ひな誕祭まで残り1ヶ月を切った時の出来事だ。紗理菜ちゃんから着信が届く。そこにはきくとし*8を交えて話しており、佐々木久美さんが冒頭「アロハ~」と言う所から始まる。まさかこれがフラガール主演決定のフラグになるとは思いもしなかった。その後も暴走気味のきくとしは続けて「懺悔」という言葉を多用して匂わせを展開しながらも、*9潮さんはしっかり「今日はいっぱい元気をもらって皆さんの優しさに救われた一日でした!」と話していた。今となってはかなり濃厚な52秒であり、全さんしゃりー菜が狂喜乱舞する予兆の着信となった。

その後報道で正式に主演が決定した時には、初めての舞台単独初主演という事もあり「まだ何もできない私ですが、これから全力でフラガールになれるように頑張ります!」といつも通りの謙虚なコメントを残していた。

3月30、31日に日向坂46の一大イベントである約束の卵こと東京ドームでの3回目のひな誕祭を無事終え、これから本格的にフラガールの稽古が始まろうとしていた。そんな4月5日、彼女に悲劇が訪れた。

彼女が新型コロナウイルスに感染してしまったのである。

ひな誕祭の前に濱岸ひよりが感染してしまい*10急遽欠席となってしまったのが心残りであったのだが、彼女もその餌食になってしまうとは…。

公式サイトからの報告から約1時間後にメッセージが届く。有料コンテンツである為多くは言えないが、そこには彼女の率直な想いが長文で綴られていた。今でも見返すと心に来るものがある。着信も来ていた。喉を痛めながらも鼻声で現状を伝えようとする彼女。そんな中でも元気な時にはメッセージをいっぱい送ると宣言していた。「そんな頑張らなくていいのに。いつも頑張りすぎずに頑張ってと言ってるのに」と思いながら職場のトイレで涙が出そうになった。彼女の事が心配で普通に寝不足に陥る。あの時は自分も精神状態が酷く本当に体調不良を理由に本気で休みたかった(そうですか)(オタクはメンヘラになりがち)

宣言通り彼女は毎日メッセージを送り続けた。丁度彼女が質問返しを募集していた事もあり多い日には10通以上も届く。その中には現状報告も含まれており、発熱は3日ほどで済み喉の痛みも5日で回復したとの事。その報告だけが自分の心を癒やす原動力だ。そして症状が再発することなく4月14日に療養期間を終えて活動再開する事が出来た。とりあえず一安心。

と思った矢先、またも彼女から悲痛のメッセージが届く。

共演者の演技に圧倒されて自信を失ってしまったようだ。

コロナ感染で出遅れ責任を痛感している事もあり、周囲の温かさでより申し訳ない想いでいっぱいだったとの事。彼女らしさを感じると言えば感じるが。

フラガールの演出家兼プロデューサーの岡村俊一さんは、そんな彼女に対しTwitterで激励のコメントを発表した。恐らくグループ内でも発信したであろう言葉なのだが、改めてこうやって近況を報告してくれる事が、現場の風通しの良さを表しているのだろう。

彼女は特にMirii*11さんや立野沙紀*12さんと仲が良く、稽古場の前で四つ葉のクローバー探しをして人数分のクローバーを集めるほのぼのエピソードを聞く事が出来た。なかなか前に進めず苦しい思いをする彼女であったが、周囲の優しさに包まれながら前を向いて一歩ずつ歩みを進めた。

そんな試練を乗り越えた彼女が、ついに舞台に上がった。

舞台感想

ここでは各登場人物の感想を述べたいと思う。

・谷川紀美子*13(潮紗理菜(日向坂46))

言わずもがな自慢の推しメン。普段はハスキーな声で周囲に癒やしを与える聖母キャラであるが、舞台上の彼女は違った。力強い福島弁を流暢に話し、クセのある話し方と動きを表現しているのはまさに屈強な田舎娘を感じる。

谷川紀美子さんは自分よりも相手を優先する性格で、親友である早苗を誰よりも大切にしているとにかく仲間想いな一面があり、正義感をも併せ持つ紗理菜ちゃんと重なる部分が多い女性の印象であった。まどか先生が当初肥満体型である小百合を全否定した時に徹底的に反論したり、仲間の悪口を絶対に言わない人間味溢れる部分もあった。その反面、ダンサー志望を反対された母親に反抗しその場で家出する姿や、早苗が父の仕事上の関係でフラガールを卒業する時のシーンではあっさりと後を追う形で「私も辞めちゃおうかな」と宣言したりと思いつきの行動・発言が多い印象もあった。しかしこれは成長していくにつれて無くなっていき、フラを通じて元々あった人間力が更に磨かれた成果ではないかと思う。

ラストシーンでは紀美子のソロダンスを披露していた。これはレッスン初日にまどか先生が見せた時のフラだ。まどか先生のダンスは情熱的で力強いものを感じたが、紀美子は対照的に華やかでダンスの楽しさを体全体で表現しており、元々バレエを学びダンスが得意な彼女だからこそ出来るしなやかな動きに見惚れた。推しメンが一人の力でダンスを魅せている。普段は縁の下の力持ち的存在でメンバーの面倒を見ていた側の彼女が、炭鉱の娘からダンサーになる強い女性を演じている。思わず涙した。これは紀美子の成長物語であり舞台女優・潮紗理菜の成長物語でもある。しかしそこに潮紗理菜の姿はなく、終焉まで谷川紀美子を演じ切っていたのである。

自分は4公演分を見てきた訳だが、日を跨ぐ内に彼女の演技がナチュラルに変化していった。初日はかなりクセのある福島弁を用い動きも大きかったが、メリハリのある演技はもちろん歌唱シーンでも余裕のある笑顔を確認できた。コロナ感染で最悪のスタートを切った彼女が、堂々と紀美子を熱演しこの9日間を走破した。アイドルとしてではなく演者としてのプロ意識をこの目で確認できた。この女性を好きになって本当に良かったと心から思う。

 

・木村早苗(太田夢莉*14

ナンカス時代に一度だけ握手した事がある。初恋至上主義いいよね。しかし舞台上の彼女の演技は紀美子に寄り添う親友かつ戦友でどこかおちゃめな一面もある性格である。

紀美子とは違う良い意味での思い切りの良さがある。そこには強い信念があり、自分自身の未来を変えたい一心でまどか先生に弟子入りしてフラダンサーの世界に入り、また紀美子がフラガールとなるきっかけを作ったキーマンである。

一番印象的なシーンは、何と言っても父親である清二が炭鉱を解雇され、フラに勤しむ早苗を後ろから鎌で襲う所だろう。勿論暴力が良くないのは清二自身も分かっているはず。だがこれまで20t、25tと黒いダイヤモンドを掘り続け、家計を支え続けていた父の気持ちも分かる。絶望に陥り全てを失った無念さから突発的に襲ったのだろう。そんな中でも早苗は父の境地を知っていたからこそ、途中まどか先生が間に入った所を「父ちゃんは悪くねぇ」とひたすら擁護していたのであろう。突然職を失うと何もかも投げ出したくなる心境。自分も経験してきた事なので嫌というほど分かる。早苗の父役である吉田智則さんはそんな絶望感漂う中で熱い演技と迫真の雰囲気を醸し出していた。これが役者の真髄であり舞台鑑賞の魅力。早苗だけでなく、父の追い詰められた境遇にも同情して思わず涙。太田さんがインタビューで語っていた「自分のしたい事が自由に出来ない時代のつらさ」を思い知った。

 

・平山まどか*15矢島舞美*16

紀美子率いる炭鉱娘を立派なフラガールへと成長させた張本人。矢島さんと言えばやはり℃-uteのイメージが強く(大きな愛でもてなしては本当に名曲だと思います)その中でも特に綺麗な女性だと思っておりハロカスでなくとも魅力を感じる事があった。2017年に解散した事が未だにピンと来ていない所ある。なくない?

まどか先生は名門SKDのトップダンサーであり、絶対的な自信とプライドを持っている強い女性である。複雑な家庭環境で育ち、男と金にだらしない母親に振り回されている事もあって、ダンサーとして人一倍努力する日々を続けた結果、SKDのエイトピーチェス*17のセンターを張るまでに上り詰めた。しかし母親の浪費癖は相変わらずであり、稽古場では毎回借金取りに追われる日々を過ごしていた。そこで吉本紀夫*18と出会い、彼が提示する給与の条件に惹かれフラガールの臨時講師となった。

まどか先生は前述の通りプライドが高く気が強いからか衝突する事も多く、中々自分の想いを晒け出せなかった。優しくされるのが嫌いで一匹狼なイメージを持っていたが、福島という地で過ごしていく内に組合以外とのわだかまりも減り、当初は教え子たちのあまりのレベルの低さに苛立ちを覚えていたが、組合と衝突した時には生徒を必死に守る姿勢を見せる所から心からダンスと仲間を愛する凛とした女性であると感じた。毒舌家であり、紀美子の母・千代に「脳みそにカビが生えてる」、和美の父に「石炭に埋もれて死んじまえ」など敵にすると恐ろしい人物でもある(矢島さんのような美人に言われると何処かマゾヒスティックな快感を覚えるのは僕だけでしょうか)

 

・熊野小百合(大串有希*19

個人的には小百合に一番共感できたかもしれない。物語の行方を左右する重要な人物であり、精神的にも肉体的にも成長したのが彼女であると思う。

学校ではいじめの標的にされ不登校気味であった彼女。父から無理矢理引っ張り出される形でフラガールのメンバーとなったのだが、お世辞にもダンスに相応しくない肥満体型であり、食べる事が好きでレッスンでも合間にパンを隠し持っては食べるシーンもあった。まどか先生に散々ダメ出しされた事もあり素人集団であるどのメンバーよりもスタートラインは遠かったが、最愛の父の応援もあり努力に努力を重ね体重も絞り、立派なフラガールへと成長した。

そんな彼女が一番光るシーンは、公演前の準備をしていた時に小百合の父が働く炭鉱で事故が起こった事を知った時の場面である。事情を知った一行は急遽出演を中止し炭鉱へ帰ろうとする準備をしていたのだが、ここでの小百合の涙声ながらの決意に胸を奪われた。「踊らせてくんちぇ…」彼女の意思は固く、自分の目の前の仕事に集中した。

最終的に父は落盤事故の餌食に遭い死亡。死に目を見る事は出来ずに号泣していたが、後悔こそしていないと感じられた。それは彼女自身も父も、フラガールとして全うしていきたいという強い想いが一緒だったからだろう。臆病な彼女が自ら殻を破った。自分に自信がなく引きこもっていた彼女を救ったのは、フラダンサーになるきっかけを作った今は亡き父や、時に優しく時に厳しくそして誰よりも間接的に自信を持たせた紀美子の存在*20、成長の環境を作ったまどか先生、そして何よりも誠心誠意で取り組んだ彼女の決意と努力の賜物だろう。そして紀美子の人間らしさを演出していたのも彼女様様である。

 

・飯田和美(兒玉遥*21

炭鉱で働く女性であり、そこで一緒に働く光夫と付き合い、仲間達と衝突しながらも後にフラガールとなる一人の女性である。舞台オリジナルの役回りであるが兒玉さん本人は「先入観なく演じる事が出来るので演じ甲斐がある」と前向きに語っていた。この仕事に対するポジティブシンキング、是非とも見習いたい。

フラガールでは唯一愛する人がいる娘であり、愛の力で幾度となく訪れる試練を乗り越えるお嫁にしたい人物である。光夫も後にハワイアンセンターの植物係*22となり、仲間である炭鉱夫と衝突しながら助け合ってお互いの目の前の仕事に没頭している。故に土下座をするシーンが多く、彼女がインタビューで話していたようにその綺麗な土下座姿にも注目してほしい。まさに理想的なカップルであり、夫婦に相応しい関係だ。マジで末永くお幸せになってくれ。頼む。

 

・佐々木初子(岡田帆乃佳*23

フラガールを見ていた人にとってはかなり印象的なキャラクターであったと思う。個性的な喋り方と強烈なギャグで楽しませてくれたダークホースである。

楽天家であるが、旦那に逃げられ1人の子供を持つシングルマザーとして生きる彼女は既に38歳*24フラガールとは到底言えない年齢であるがサザエさんを彷彿とさせる髪型と黒縁メガネをかけた特徴的な風貌から紀美子よりもクセがすごい福島弁を操り、最後は特徴的なメガネを外し華やかなダンスを魅せていた。

これは何回か舞台を見ていないと分からないが、初子は公演で毎回ダンスや台詞の一部分でアドリブを変えており、どれも秀逸で笑ってしまった。特に初めて客前でパフォーマンスを見せたが失敗した時の言い訳に「屁が出た」「膝に爆弾を抱えていた」「歯が抜けた」など一部割と深刻なものもあり、まどか先生が手話についてレクチャーしていた時には思わず「シュワッチ」と言うなど、所々でおばさんらしいナイスキャラで舞台を和やかな雰囲気にしてくれた。

 

・谷川洋二朗(高橋龍輝*25

紀美子の兄であり、常磐炭鉱で働いている炭鉱夫。仲間から「洋ちゃん」と呼ばれ炭鉱での中心的存在である彼は、非常に妹思いの兄貴分で家族と地元を愛す実直な人物。反面、不器用で中々自分の想いを伝えられないまどか先生と似た性格だと思う。表面的には立場上ハワイアンセンターの建設に反対せざるを得なかったが、紀美子の事は変わらず応援しており、居酒屋でまどか先生と出くわした際には喧嘩しながらも「妹の事、よろしく頼みます」と言うシーンや借金取りを追い出すシーンなど、紀美子と同様人間味溢れる人物だと思う。ハワイアンセンター開業時に借金取りを追い出すシーンでは今までの鬱憤が晴れたように、清々しい気持ちで紀美子を応援する姿があった時には涙が止まらなかった。この兄ちゃん、滅茶苦茶泣かせてくれるじゃねぇか。

ちなみに彼の言う「でれすけ*26」の言い方の大ファンです(そうなんですね)

 

・谷川千代(有森也実*27

紀美子の母親であるまさしく"山の女"と言えるフラガール達とはまた違った強さを持つ女性である。

「炭鉱で生きる男を支えてこそ女の仕事」が彼女の信念であり、婦人部部長まで勤め上げる彼女は、炭鉱夫であった父を亡くしてもなお女手一つで紀美子と洋二朗を育て上げた。

プライドが高く頑固であり、当初はフラを一つの風俗産業である事を信じて疑わず、フラガールになろうと決意した紀美子と衝突するが、物語が進んでゆくにつれて時代の変化に付いていこうとする姿や娘の成長する姿を傍らで応援する姿勢、強がりながらも最終的に彼女の晴れ舞台を笑顔で見届けていた姿には、回り道しながらも本物の親子愛を感じた。反抗期は誰にもあって一度出来てしまった溝を埋めるのは大変だ。しかしどんな形であろうと自分の子供が選んだ道を尊重し支えていく事を決めた千代は、母親の鑑ではないだろうか。

総括

フラガールでは「一山一家」という言葉が随所に登場する。一山一家とは、かつて炭鉱の街として栄えた場所らしく「その山、炭鉱に関わる全ての人々が家族である」という連帯感を表した言葉として今でも残っている。そんなシーンが舞台上でもオフショットでも感じられた。

例えば初子での説明の通り舞台ではギャグシーンにそれぞれアドリブが設けられていたのだが、千穐楽ではそれがチームワークとして取り入れられていた。そのシーンが平山がフラの手本を見せ横に列を作り基本を教えようとする際、一番の見どころのポーズを横に並ぶ全員が真似しだした所に連帯感を感じた*28。機転を利かせてツッコミを入れるまどか先生も素晴らしいし、見る人全てを楽しませてくれるアドリブを考えてくれる出演者全員に拍手を送りたい。オフショットでもお互いをリスペクトし合いながら舞台を楽しみながら稽古を乗り越えた姿が垣間見れた。クソみたいなニュースが今日も溢れる中、人間の温かみを部外者ながら感じ取れたような気がする。

この作品は様々な場面で感情移入出来る場面が多く、事前知識が無くとも十分楽しめる舞台である。きっかけはなんであれ推しメンの活躍姿を拝められたとともに舞台そのものを大いに楽しむことが出来た。いわきという街に興味を持てたきっかけにもなり間違いなく値段以上の価値があり何度も見たくなる作品だ。気になった方は6月25日にTBSチャンネルで放映されるので、是非ご覧になって欲しい。

www.tbs.co.jp

 

参考資料

ハワイアンズヒストリー|スパリゾートハワイアンズ

【日本のエネルギー、150年の歴史③】エネルギー革命の時代。主役は石炭から石油へ交代し、原子力発電やLPガスも|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁

-群像- いわきの誉れ「常磐興産元社長(スパリゾートハワイアンズ) 中村豊」 | WEB版りぃ~ど

ピュアと感動が詰まっている『フラガール』間もなく開幕! 太田夢莉・兒玉遥・大串有希 インタビュー | えんぶの情報サイト 演劇キック

日向坂46・潮紗理菜「常夏の太陽のような舞台を―」 『フラガール』開幕レポート

*1:ポリネシアとはギリシャ語で「多くの島々」。オーストラリアの東端に位置する三角形の島々を指し、ハワイ・ニュージーランド・チリのイースター島などが含まれている。

*2:但し「フラ」ハワイ語で「踊り」である為、本来「フラダンス」という言葉は明確に言うと二重表現である。

*3:石炭は戦後における経済再建の為、日本政府から緊急増産対策が実施されるなど極めて重要な燃料であった。しかし1950年頃からアフリカや中東で続々と大油田が発見され、1962(昭和37)年に日本政府で「原油輸入の自由化」が施行されて以降、高度経済成長期に突入し自動車や重化学工業の発達、石炭に比べ安価さと供給のしやすさもあって石油が大量に消費された。なおこの頃から炭鉱の閉山が相次いで発生する事態に見舞われる。

*4:モデルとなった常磐炭鉱(現:常磐興産)では1955年頃から整理解雇が行われていた。

*5:現:スパリゾートハワイアンズ

*6:1964(昭和39)年の日本観光協会の調査によると、日本人が行ってみたい外国ナンバー1がハワイであったが、当時海外旅行が高価であった為庶民にとって中々手が出なかった。そこで地下に大量に湧き出る常磐湯本の温泉水を利用して、地熱で暖める事によって気軽にハワイの雰囲気を味わえる事をコンセプトとしていた。

*7:ミュージカル劇団・松竹歌劇団の略称。当時宝塚歌劇団とは二大巨頭であり集客競争を繰り広げていた。1996年解散。

*8:佐々木久美さんと加藤史帆さんのコンビ名。

*9:潮さんがセンターの楽曲『真夜中の懺悔大会』にちなむ。

*10:3月26日に感染報告。なお濱岸は感染前にTGC(東京ガールズコレクション)に参加しており、同じく参加した櫻坂46の渡邉理佐が同時期に感染した事からクラスターと思われる。

*11:クリスティーナの一人である鈴木みり役。幼少期からタヒチアンダンスに触れ、ダンサーとして活動を拡げている。

*12:秋元康プロデュースの劇団ユニット「劇団4ドル50セント」に所属する劇団員。痛快TVスカッとジャパンやTHE突破ファイルの再現VTRにも登場しておりテレビでも活躍している。

*13:モデルは常磐音楽舞踊学院1期生の小野恵美子。現:レイモミ小野フラスクール主宰、スパリゾートハワイアンズ付属常磐音楽舞踊学院顧問。

*14:女優で元NMB48。愛称は「ゆーり」「ゆーりたん」など。

*15:モデルは常磐音楽舞踊学院の初代講師であったカレイナニ早川(本名:早川和子)。現:常磐常磐音楽舞踊学院最高顧問。

*16:女優で元℃-uteリーダー。2022年6月で芸能生活20周年を迎える。

*17:SKDメンバーの中から選抜された8人で作られるダンスチーム。当時圧倒的な人気を誇っており、エイトピーチェスに選ばれるのは団員の名誉と言われていた。AKB48で言う神7的な存在。

*18:モデルは常磐炭鉱(現:常磐興産)の元副社長である中村豊

*19:潮さんと同じ1997年生まれ。Ruby・sue所属。2014年にテレビ朝日系ドラマ『科捜研の女』で女優デビュー。特技にフラダンスとタヒチダンスを挙げている。

*20:炭鉱夫の集団解雇によりフラダンサーとして加入せざるを得なくなった娘たちが新たに加入された際、ダンスを教えるシーンで紀美子が敢えていじめられっ子の小百合にお手本を見せるように仕向けていた。

*21:女優で元HKT48。ニックネームは「はるっぴ」。

*22:主にヤシの木を保護する仕事をしている。ヤシの木は基本寒さに弱く(ショロやココスヤシなど一部例外もある)衰弱を防ぐ為、組合にストーブを提供するよう頼み込むシーンがあった。

*23:秋元康プロデュースの劇団ユニット「劇団4ドル50セント」に所属する劇団員。

*24:ちなみに初子演じる岡田帆乃佳さんは1996年生まれ。普通に喋り方もおばさんらしかったのでお見事である(褒めてます)。

*25:男性俳優集団元D-BOYSの俳優。D-BOYSにはかつて城田優五十嵐隼士などがおり、現在は志尊淳が在籍している。

*26:福島弁(一部北関東でも使用する)で「ばか、あほ、まぬけ」の意。舞台中顕著に登場する言葉でもある

*27:女優。伝説のトレンディドラマ「東京ラブストーリー」の準ヒロインも演じた大女優である。

*28:公演が始まって間もない頃は例のポーズをしていたのは早苗のみだった。