若葉の繁る頃に

しがないアイドルオタクの備忘録とチラシの裏書き。「なんとかなる」人生を送るのが目標です。

#22 若葉

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朝。起床して間もなくAlexaに気温を聞くと「最高気温は摂氏31℃です。」と返される。テレビを付けてニュースチェック。憂鬱な平日の朝に朝食のアンパンを頬張っては牛乳を流し込み、今日も何気ない一日が始まる。

 

今日は特段急用もなくお手空き状態だ。エンタメ系のニュースはジャニーズ関連のマイナス記事の山だったので好きな野球関連のニュースをYahooで見る。「ヤクルト、昨日は良い勝ち方だったねー」とか「阪神は"アレ"間近で大阪は大盛りあがりだねー」というニュースを散見してはある程度日常的な業務をこなすとあっという間にお昼の時間だ。

 

「潮 紗理菜のブログが更新されました。」

 

スマホから推しメンのブログ更新通知が鳴る。

紗理菜ちゃんは普段からライブ終わりのブログは丹精を込めて書きがちだ。なので大抵この手のブログは早くて翌日の夜だと思っていた。ライブツアーの神奈川公演2Daysが終わったのは昨日。やけに早いなと思いつつも通知をタップする。

 

衝撃的な文章が書かれていた。

 

「私、潮紗理菜はこのアルバムの活動をもって日向坂46を卒業します。」

 

 

 

「えっ…」

 

時間が完全に止まった。

 

「紗理菜ちゃん…。なんで…。なんで…。」完全にパニック状態である。涙腺が一気に決壊し、目は赤く腫れる。過呼吸状態になり脳は煙を吹いて機能停止する。

 

スクロールする指が止まる。スマホとスラックスに涙を落とす。

ブログを読み進めたが一切内容は入ってこない。頭が真っ白になって何を言えばいいのかまったく分からない。浮かんでくる言葉は「無理・絶望・虚無」。脳が何かしらに支配されているかのように頭に思い浮かんだ文字はこの3つしか出てこなくなる。

 

何とかブログ読了。

その後Twitterにこれでもかと胸の内を爆発させて昼休みはあっという間に終了。弁当が無味に感じてしまい大盛にしたにも関わらず満腹感もなかった。涙で目と鼻を赤くしていた顔を昼休みから帰ってきた先輩に指摘されると、作り笑いをしながら「鼻風邪ですかね笑」と鼻水を啜ってわざとらしい返答をした。しばらくしても動悸は止まらなかったものの、夕方には何とか落ち着いた。終業の時刻となり同室の先輩方は帰宅。自分一人しかいない空間の中、スマホの中の紗理菜ちゃんの写真を見返す。落ち着いたはずが虚無感からか職場で思いっきり泣いた。ある程度泣き終えてスッキリしたと思いきや、帰宅後に紗理菜ちゃんのコレクションを眺めてはまた泣き崩れた。

 

 

僕が紗理菜ちゃんを好きになったのは2019年の秋頃。3rdシングル「こんなに好きになっちゃっていいの?」の収録曲にある「ママのドレス」をMVを見た際に笑顔が一際輝いて見える一人のアイドルに釘付けになった。そのアイドルこそが潮紗理菜さんだ。

 

当時は推しメンがなかなか決まらず、おひさまである当時の上司の勧めで宮田愛萌さんに行くもしっくり来なかった所があり(宮田さんがどうのではなく自分と合わなかっただけの話です)、推しメン探しに一苦労していた矢先での出来事だ。あれから紗理菜ちゃんに狂ったようにハマっていき、基本的なプロフィール確認からひらがな推しや舞台あゆみ視聴、過去ブログの確認と色々調べたものだ。当時はストレス過多により前職を辞め、無職期間でいた頃の話だ。時間はたっぷりあったのでひたすら紗理菜ちゃんについて調べまくってはその魅力に引き寄せられ、前職や転職活動でのストレスを発散した。あとは再就職を決めて晴れて彼女と握手するという今となっては理想論を描いていた。

しかしその直後にコロナが流行りだす。本来握手券として使うはずが、ミート&グリート(通称ミーグリ)で彼女と話すのがメインになってしまった。しかしなかなかコロナが収束しない一方で僕はひたすら単推しを貫いて券を積んでは彼女とコミュニケーションを重ねていく。最初はお互い敬語で話し合っていたのに、いつしかちょっとした冗談話が出来る関係にまで発展した(と思っている)。おしゃべり好きな紗理菜ちゃんは必ずと言っていい程、会話が途中で途切れてしまった。恋人同士でもないのに恋人同士のような会話が出来る。それが彼女の魅力であり誰だって恋する凡人状態になれる。その3年後にはお互い名前を呼び合いながらリアルで話す事が出来た時の感動は計り知れなかった。これも紗理菜ちゃんだからこそ生まれる信頼関係である(と勝手に思っている)。

紗理菜ちゃんに滅法夢中になった20-21年はひなあい以外のメディア出演こそ少なかったが、そんな中で彼女が爪痕を残すとそれが些細な事でも喜べる自分がいた。普段から斜に構えてはおまいつといったオタクを見下しては悦に浸っていた自分が、初めて心の底から大好きな推しメンを見て楽しめるようになった。

22年は彼女にとって大いに飛躍した年だ。初めて舞台に挑戦し「フラガール」で主人公の谷川紀美子役と座長を見事に務め上げた。紀美子はゴリゴリの福島弁が効いた何とも癖の強いキャラクターであったが、紗理菜ちゃんは自分なりの紀美子を表現し、かつての諸先輩方が演じた紀美子とはまた違う紀美子として表現したと語っていた。そして「真夜中の懺悔大会」という、彼女が初センターを務める楽曲も爆誕した。今ではサリマカシーラジオの先陣を切る曲としても大活躍中。ただ今後は涙なしには聴けなくなってしまうのかな。

翌年の23年も舞台に挑み、「レ・ミゼラブル〜惨めなる人々〜」にてヒロインのコゼット役を熱演した。一方でコゼットは貧しい母子家庭の中で明るく健気な性格で、まさしく紗理菜ちゃんを体現した役だ。途中マリウスと手を繋いだりジャン・バルジャンの胸で号泣するシーンで思いっきり歯ぎしりしたもののフラガールとは違って普段の紗理菜ちゃんを舞台上で見る謎の新鮮さを感じられた。紗理菜ちゃんが女優としてマルチに活躍できる姿を見られて感動と少し寂しさを感じたり。

 

 

紗理菜ちゃんはある夢を持っていた。

「声にまつわる仕事をしてみたい」という夢だ。彼女はトーク内で「潮紗理菜のおっしゃり菜」というラジオ"ごっこ"として当初は"根っこの"井口眞緒と共に発信していた。元々声にコンプレックスを抱いていた彼女がそんな夢を持つのは意外すぎるが、マイナスをプラスに変える力を身に付けここまで自ら夢を語ることの無かった彼女が、ようやくトーク内で打ち明けたのだ。

おっしゃり菜は"根っこの"井口卒業後もサリマカシーラジオが誕生した後も続いていた。特に2020年の春頃はステイホームという時期の中で毎日発信しており、必ず夜8時には複数の着信が届いていた。この頃は最初に紗理菜ちゃんのフリートークから始まり、その後には読者からの質問コーナーが設けられ、ラジオ"ごっこ"が少しずつ形になっていく。以降は多忙もあり更新頻度が少なくなったものの、22年の冬頃には本気でおっしゃり菜を改良したいとメッセージで彼女からの依頼が届く。自分なりに考えた構成をミーグリで話すと「でもちょっと話長くなるよ?笑」と言いつつも、その日以降本当におっしゃり菜で自分の構成を採用してくれたのだ。推しメンはどこまでも素直でファン想いである事を大いに感じ取れた瞬間だ。

そして来る4月、ついに紗理菜ちゃんの冠ラジオ番組「日向坂46潮紗理菜のサリマカシーラジオ」がスタートしたのである。出演者は紗理菜ちゃんのみなので完全に理想的なおっしゃり菜の延長線上だ。自分もいくつかお便りを送ったのだが、5月に晴れてリスナーのお悩みを紗理菜ちゃんが解決する「響け!ガムランボール」コーナーで読まれて感慨にふけたものだ。あの時紗理菜ちゃんに質問した「野菜を腐らせない方法」の解決策に「冷凍させましょう!」という鶴の一声を未だに覚えている。その他にも完全にあのラジオ"ごっこ"から引き継いだ「おっしゃり菜」や、未完成のまま終わったが意味のある未完成を紗理菜ちゃんと共有していく「僕の私の未完成」など聴いていて人生の奥深さを痛感できる彼女に相応しいコーナーだ。機会があれば読者も是非お便りを送ってほしい(宣伝)。

 

帰宅して大きな溜息をついて冷蔵庫を開け、スーパーで買ったストロング500ml缶を冷やす。その間に一昨日の汗で滲んだサリマカシータオルやデニムを丸ごと洗濯する。元々冷蔵庫にあった4%の缶チューハイを飲み干した後、皿洗いと明日の弁当作りを済ませている時には割りかし目の前に集中できたが、これらを一通り終えて部屋の棚の紗理菜ちゃんのグッズに目を向けるとまたも熱い何かが込み上げ、冷房を効かせているにも関わらず、アルコールも手伝って全身の水分を使い果たすまで泣いた。洗濯が終わり洗濯物を干すと先程の"サリマカシータオル"の姿が。またも涙腺が決壊する。今日だけで2年間分の涙を流したのかもしれない。

そして世間であれだけ話題になっている野球の話題から完全にシャットアウトしてモニターを前にキーボードを打つ手を走らせた。前回のサリマカシーラジオで発表した紗理菜ちゃんの日向坂MIXというプレイリストを聴いたら涙で集中出来ない。ここは優しい気持ちになれる大好きなスピッツをシャッフルで再生しながら紗理菜ちゃんとの思い出を書き記した。

 

帰宅途中に過去ブログを遡っていく。そこには初々しさが残る紗理菜ちゃんの姿が。

2016年8月。当時18歳。B612とかいう今や化石の加工アプリもあの頃は現役だ。当時は凄くアイドルらしい内容が多く、「言葉を紡ぐようになったのはいつ頃なのかな」と考えたり欅坂を通っていた頃「確かにこんな感じだった」と回顧してはあの頃何故推していなかったのかという後悔に浸ったり(元推しメンがアレなので)。それでも短くとも紗理菜ちゃんと過ごした時間は自身の人生における大きな宝物だ。

www.hinatazaka46.comただこのブログとかめちゃくちゃ好きなんですよね。時代を感じさせる釣り方というか、無理して作っている感は否めないけど、熟成肉のような良い香ばしさを醸し出していると思うんですよね。そう思いません?(とことんキモオタ)

 

ブログ執筆中に彼女からメッセージが届く。紗理菜ちゃんらしい長文の中でファンに対する彼女の想いが綴られていた。心無いオタクからの誹謗中傷を浴びせられる壮絶な日々からアイドル人生を始めた彼女が、今では夢であった冠ラジオ番組を持ち、舞台でも高評価を得て名実ともに大きく飛躍を遂げたアイドルとなった。しかし謙虚な気持ちはそのままに、自分を好きでいてくれるファンに向けて、一つ一つの言葉を真心を込めて書いてくれたのだ。純粋で眩い心を持つ彼女のアイドル人生がバッドエンドとして終わらなくて良かったと本気で思えた瞬間でもあった。

既にツアーの追加公演が決定したKアリーナ2Daysは申込済みだ。最後の彼女の一挙手一投足を間近で確かめたい。彼女が7年半培ってきたこの大冒険の締めくくりを是非この目で確かめたい。本気で好きになった彼女の為に全力を注ぎたい。

 

直近だと16日、28歳を迎えるタイミングにミーグリがある。紗理菜ちゃんに誕生日を祝ってもらいたいけどまずはお礼の気持ちをどうしても伝えたい。ただ彼女の目をまともに見ようとしたら涙で何も見えなくなってしまう。何とかして自分の想いを伝えたい。ただそんな自信は端から無い。行き交う感情が複雑化してパンクしそうです。

 

もっと言いたいことは山ほどあるが、直接言いたい事は彼女に直接手紙に興そうと思う。執筆が一通り終わり時刻は夜の12時前。自身の27歳も残りカウントダウン。このブログのタイトルの由来にもなったスピッツの「若葉」を聴く。「若葉」はスピッツの代表的な卒業ソングだが季節的に夏ソングとしても解釈出来るんですよね。紗理菜ちゃんが卒業発表した季節も、若葉の繁る頃なのは果たして偶然なのだろうか?

 

youtu.be

 

話は変わるが、僕はこの10月から社会人として働きながら大学生として学び始める事にした。

紗理菜ちゃんを推し始めてから、僕は彼女から人生において様々な事を学んできた。継続する大切さ、周囲に愛される人が欠かさず行うルーティン、失敗を恐れない心など。彼女が残してきた軌跡の中で自分も何かしらで形にしたいという夢が出来た。現状自分が今何をしたいのかは決まっていないが、まずは否定から始めずあらゆる事に挑戦していく気持ちで臨むつもりだ。

既に出願して学費ローンを組み、今は学生証と教科書待ちだ。2週間後には総重量20kg超えと言われる教科書の山が届く。期待と胸を膨らませながら今はそれを楽しみにしている。そして土曜日には28歳を迎えまた一つ歳を重ねる。アラサー真っ只中、紗理菜ちゃんからの教訓を胸に、彼女の知らない道を歩き始めたいと思います。

 

潮紗理菜ちゃんというアイドル、ではなく一人の人間に出会えて本当に良かった。

 

完全に自分語りの内容になってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

 

そして潮紗理菜さん、あなたの事が本当に本当に大好きです。

 

思い出せる すみずみまで
若葉の繁る頃に 予測できない雨に とまどってた
泣きたいほど 懐しいけど ひとまずカギをかけて
少しでも近づくよ バカげた夢に

今君の知らない道を歩き始める

 

スピッツ/若葉